ちらり、盗み見た顔は泣いていた。
もっともっと嗚咽を漏らし、顔をぐちゃぐちゃにして泣くような奴だと思っていた。
でも予想に反してその横顔は穏やかで、
ただ、ゆったり泣いていた。
まばたきがめっきり減ったその目に涙がうかんで瞳を震わせ、
十数秒に1回のまばたきで、あふれた涙が頬におちる。
一筋の道になった涙の痕をぬぐいたかった。
でも、それは今、許されない気がした。
(俺のを長いというけれど自分だって、結構)長い睫毛と、
形のよい顎が小さく震えていた。
なんて、
静かに泣くんだろう。
何を言っているのか分からない(でもこいつには分かるのだろうか)洋楽が聞こえてきて、
スタッフロールが終わるまで動かなかったその身体が、
映像も音声も途切れて部屋が一瞬暗転してからまた青白く光りだした後、
ようやく力を抜いてはぁと息をついた。
「おもしろくなかった?」
振り返った(ようやくこっちを見た)顔は、まだ涙が残っているくせに笑っている。
手がすんなりその頬に伸びた。
「ん、よくわかんなかった」
「そっかあ」
両目の下を優しくぬぐうと、タカ丸はそれを受け入れた。
くすぐったそうに目を細める(笑った)
「じゃあまた違うの借りてくるね」
うん、と返事を返したけどもう感動するような話はよしてほしい。
そんな顔、(見惚れてしまう。)
「これ俺的にはすごく良かった。
三郎くんに教えてあげよ」
もう知ってるかもしれないけど、と呟きながらDVDプレイヤーから円盤を取り出す。
「そういえばお腹へったね。
今日の晩御飯なんにしよっか」
映画が終わった瞬間にぺらぺらよく動く口。
正直、こいつがすぐ隣にいるのに何も話せないなんてなんだか気色悪くてたまらない。
それに俺のことを見ない目も。
「ねぇ、なに食べたい?」
DVDをケースに入れながら顔をあげたタカ丸は笑みを浮かべて俺を見てそう言った。
見惚れるくらい綺麗に泣くから映画なんか目に入らない。
でも側にいられる密着していられる、だから嬉しい。
それでも話せないことも見てくれないことも気に入らない。
よかった。
もうタカ丸は俺のもの。
(映画に妬くなんて、冗談じゃない)
***
久々知がわかりやすけど口には出さない我が儘っ子ならいいと思います。
独占欲とか強いとすごくいいと思います。
タカ丸も同じだけ強いともっといいと思います。
タカ丸はしっとりしてる感動系には静かに泣くけど、
ホラーとかだと泣き叫んでそう(ニマニマ)
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