足の間に座って私の腹にもたれてくつろいでいる小松田君の髪を撫でながら、
久しぶりに過ごすゆったりとした時間にまどろんでいたその時だった。
ふいに屋根裏に気配を感じて私は目線を向ける。
なんの変哲もないように見えるが、あの天井の裏には曲者が潜んでいる。
こっちはプロの忍者なんだ。
たいして隠す気もないその気配に、私が気付かないはずがない。
「まったく…土井先生は」
「ふぇ?どうしたんですかあ?」
振り返って見上げてくる小松田君の鼻先が顔にあたってこそばゆい。
仕返しだとばかりに顎で耳の近くをもぞもぞと撫でてやれば、
思った通り間延びした声で「くすぐったいですよぉ」と笑った。
その瞬間、ぶっと吹き出すような声が天井裏から漏れてきた。
あの人笑い堪えるの下手すぎるだろう。
いや、十中八九わざとか…。
そう考えて、思わずため息が出る。
せっかくの癒しの時間だというのにストレスがたまっては意味がない。
「どうしたんですか?体調悪いんですか?医務室いきます?」
「いや、違う。全部あの土井先生のせいだ……」
どっしり、ため息を吐き出す。
せめてもの嫌味のつもりだったが、相手は堪えている様子もない。
「…利吉さん」
「なん、うぇっ!」
唐突に身体ごと振り返ったと思うと、
小松田君はそのまま体当たりをくらわせるように私に飛びかかってきて、
不意打ちとはいえ小松田君に押し倒される形になってしまった。
見上げた顔が不機嫌そうで、私は思わず目を瞬かせる。
「土井先生土井先生って、利吉さんと一緒にいるのは僕ですよ!
それなのに他の人のことばかり言ってると僕、やきもちやいちゃいますよ!」
「っ……」
むっとしたふくれっ面に少し不機嫌そうにそらした目線。
悪いが全く怖くない。
だって、か弱い手はきゅっと服を掴んで離さないのだ。
「…君は馬鹿だなあ」
土井先生でなくても誰かに君との時間を邪魔されるのが私は嫌なんだ。
それに、君のそういう顔とか仕草とか。
私だけに向けるそのどれか一つだって誰か他の奴に見せるのなんて最悪。
そう思っていることは口にしない。
ただ、黙って彼の唇に直接刻み込んでやる。
後ろで大爆笑の声が聞こえないよう、
彼の耳を塞ぎながら両手で小松田君を引き寄せた。
***
土井先生は天井裏でのた打ち回ってらっしゃる。
押し倒されてんの利吉君ってばwwwwって爆笑。
そんな土井先生が大好きです。
利コマという需要にお答えてきたいるか甚だ疑問ですね。ほんとすいません。
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