薄暗い部屋の蝋燭の灯りのもと、
浮かび上がる、まともに日にやけていない背中をじっと見つめる。
白いそれに斑に浮かぶ赤。
兵助はそれにゆっくり、指先で触れた。
「ぁ、っ」
背中が緊張する。
思わず、といった風に声を漏らした横顔を覗くと、
タカ丸は痛みを堪えるように目を瞑って唇を噛んでいた。
「…じっと、して」
「ん…ごめ、んね」
タカ丸は申しわけなさそうに謝った。
へなりと眉を下げて、唇には小さく笑みを浮かべる。
たいしたことはないし、薬さえ塗れば簡単に治るアレルギーのようなもの、
らしいけれど、よくまあそうやって呑気に笑えるものだ。
兵助は小さく息を付いた。
新野先生からもらった薬を指にとって、再び肌に触れる。
びくり、肩がゆれた。
「っ、…ねえ、伊助ちゃんに聞いたんだけど、竹谷くんと喧嘩したの?」
「喧嘩じゃあない。ちょっと、仕返し」
「ふぅん」
兵助を肩越しに覗き、目をほそめる。
タカ丸は嬉しげに笑って見せた。
「…俺がむかついてただけ。
誰かさんのおかげで予算も散々だったしな」
「…あはは、ごめんなさい」
逃げるように兵助から顔を背ける。
おそらく今度は苦笑でも浮かべているんだろう。
なんにせよ、いつだって笑ってるやつだ。
「だって委員会の皆、風邪ひいちゃうとかわいそうじゃない。
お仕事だって分かってるけど、どうせなら楽しくやりたいでしょう。
火薬委員になってよかったなぁって、思いたいじゃない」
そう語る声は優しくやわらかく、大人みたいな声音だった。
兵助は、薬を塗る手を止めた。
「…兵助く、」
「伊助はお前のことすごく心配してた」
「…へ?」
「三郎次も実は、お前のこと結構、好きだろ」
兵助は、おろした金髪がゆれる背中に顔を埋めた。
互いに明度の違う髪同士が絡み合う。
「あは、やきもち?」
「ばーか」
からかうような口調に軽口で返す。
背中越しに伝わる温度を額で感じ、兵助は目をとじる。
「俺は、委員会、好きだ、よ」
甘酒とかそういうのなくてもいい。
無傷のお前と下級生や先生が変わらず、笑っているのなら。
誰でもなく、ただ背中にだけ聞こえるだけの声で呟くと、
「俺も大好き」とふわりとした声が返ってきて、
なんだかたまらなくなって白い背に口付けて舐め上げると、つんとした薬草の苦い味がして、
次いで、上ずった声がこぼれ落ちた。
「っ今日は、だめだよ。押し倒されたら、背中、痛くて泣いちゃう」
「他のに泣かされるのはいやだけど、お前を泣かせるのは嫌いじゃないから、いい」
「…、いじめっこだなぁ」
そう言って浮かべた笑みが諦めにちかいものを滲ませていたから、
兵助はちょっとくらい我慢してろと言って、優しく、手を伸ばした。
***
無駄にイチャコラしてる話になりました…
なんか、昔、私甘いの書けないとか言ってたころが懐かしい…orz
ちゃんと書けているかといえば微妙としかいいようがないですが、
砂吐くほど甘いのって、大好きです…!
ちなみにはっちゃんはとても…酷い目にあったらしいです^^
雷蔵がとめて、三郎はにまにましながら見守っていたそうです。
はっちゃん、ごめん、苦労人なあなたが大好きです(ひ土井)
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