鉢屋三郎って人は何かと偏屈そうに見えて、案外単純だ。
けど手に取るようにその心のうちが分かったり、
俺の言葉にどういう反応をしてくれるのかが分かるってほどでもなくて、
基本的に意地が悪くておもしろければなんだっていいって人なんだ。
兵助くん曰く、
「お前と三郎ってちょっと似てるよな」
らしいけれど、そうかなぁ、そんなことあるかなぁ。
だから「俺はあんな性悪じゃないよ」と言って笑うと、
そういうところだと吐き捨てられてしまった。心外。
実際のところ、どうなんだろう。
三郎くんは嫌がりそうだよね、俺と似てるなんて聞くと。
まあそれはともかく、三郎くんは意外と単純な人です。
趣味が合うからわりと仲は良くて、今日も一緒に映画を観てたんだけど。
あ、俺三郎くん泣いてるの初めて見ちゃった。
ずっと鼻をすすって、ぽろぽろと涙を零す。
三郎くんの目はうちのテレビに映し出された少し古い映画に釘付けだ。
俺はもう何度も見たことがある映画だから、俺の興味は三郎くんへ向いていた。
随分幼く泣くんだね。
いつもどっか大人びてる三郎くんだから、少し意外。
三郎くんは堪えきれずに溢れた涙を乱暴に拭う。
ああ、そんなにすると腫れちゃう。
俺が黙ってティッシュを渡すと、三郎くんは奪い取るようにしてそれを受け取った。
なーんかかわいいなあと思ったけど口には出さない。
俺はそんなこと言っちゃうと、次からもう俺とは映画観たくなっちゃうでしょ。
泣きたい映画観るときに一人ぼっちなんて寂しいもん。
ね?
「あー…」
「泣けるでしょ、これ」
「…ん」
三郎くんは映画を終わってからもう一度、ぐずりと鼻をすすって赤い目を拭う。
真っ赤な目が俺の方を向いた。
「…今度は、俺が泣けるの持ってくる」
「うん」
「ぜってぇ泣かしてやる」
泣きつかれた顔を少し赤くして、三郎くんは強気にそう言う。
睨むような目はぜんぜん怖くなくて、ああなんか年下だなぁって思った。
三郎くんはやっぱり思った以上に分かりやすい人だ。
なんか俺たち似たもの同士らしいから、気持ち分かるし。
次も目ェ腫れないように高級ティッシュ用意して一緒に観てあげる。
だから、
「泣きたくなったらまたおいで」
***
たまに無性に泣きたい映画観たくなるってあると思います。
泣いたところ友だちや雷蔵には見られたくない三郎と、おにいさんしてるタカ丸。
この2人は性格悪げな会話とかの応酬でつかみ所ない感じだとにやける。
そういうところが他人から観れば似てるんだけど、実際はあんまり似てない。
タカ丸の部屋ではハ●セレブが常備されています。リッチ!
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