ろじ+さこ
「なーにー、超機嫌悪そうだな」
縁側で不貞寝…といってももう野外で間抜けに眠れるほど鈍くもないから、
あくまでその格好だけしていると、急に聞き慣れた声がふってくる。
からかうような声の相手をわざわざ気配を消して寄るなと睨み上げると、
トイペを両腕に抱えた左近がにたりと笑みを浮かべていた。
「…そう思うならほっとけ」
「なんだつれないな。じゃあ理由、あててやろうか」
俺がしかめっ面を浮かべると左近はさらに人の悪い顔をする。
この性悪め。
自分がいいだけ不運だからって、
人の不幸を思いっきり楽しみやがって畜生。
「お前は昨日委員会の買い出しで街にいった。
話じゃあうまいと噂の団子屋に寄って土産も買ってきてくれたそうじゃないか。
ずるいな、俺にはなにもなしかよ?」
「…うるさいな」
「団子屋にいってきただけにしては…移り香がきつかった。
上等な花の香りだったな」
「………」
「まさかお前が街で女に一目惚れして尻を追いかけ回した訳はあるまい。
だってお前の惚れてる相手はあの、」
「黙れ」
睨んでやると左近の奴は笑ったまま、
長い髪をなびかせて器用そうな女みたいな、あの人みたいな、
細長くて白い指で頬杖を突いて俺を悠々と見つめた。
胸くそ悪いんだ、人が余裕のないときに、そういうツラ見せられると。
分かってるくせにそうするんだからほんと性格が悪い。
俺は舌打ちして再び不貞寝の体勢にはいる。
「お前のせいだばーか」
「あー?」
「お前なんかと友達やってるから不運うつった」
不運だ。
あんな人に、叶いもしない懸想をするなんて。
うっかり、つい、なんでか、どうしてか、惚れちまった。
年甲斐もなく自分らしくもなく拗ねた風に呟いてみると、
顔は見えなかったが、ほんの少し申し訳なさそうな声で
「そりゃあ悪かったな」と苦笑された。
本当は俺が一番馬鹿で、
俺が勝手に惚れてんだって分かってるけど、
長年不運につきあってやったんだからこれくらい、
八つ当たりされるくらい軽いもんだろ。
つきあえコノヤロウ。
***
ろじと左近は結構親友っぽいくらいの仲で、
ろじの好きなひととか叶わないこととかも全部しってて、
あえて意地の悪いことしてせっついてさっさと忘れちまえって態度ならいいなって。
左近が心配してくれてることはろじもちゃんと知ってると思います。
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