縁側に並んで二人でお茶。
よくあることだけど今日はほんの少し、相手が違う。
その違いはとても複雑で難しくて、馬鹿な俺にはよく分かんないんだけど、
隣にいる兵助くんは俺の知っている久々知兵助くんじゃなくて、
その久々知兵助くんの知っている俺は俺じゃないらしい。
「…変なの、ね。久々知くん」
「まぁいいんじゃない、たまには」
同じ横顔で同じ声だけど、こっちの久々知くんはなんていうか、どっしりしてる。
いつもと髪の色が違うらしい俺を見ても、ちょっぴり瞬きを多くして、
そのあと「お前、誰?」と平淡な声で問いかけてきたツワモノだ。
おかげで俺も久々知くんが兵助くんじゃないって分かっても、思いのほか落ち着いていることができたんだけど。
兵助くんならきっと大慌てでびっくりして落ち着いてなんていられないと思う。
そういやあっちにはこっちの俺が入れ替わっちゃってるのかな?
ちょっと心配だなぁ。
「ねぇ、久々知くん。
こっちの斉藤タカ丸って、どんな奴?」
「…すごく性格悪くて、タラシで手が早い」
「嘘!えっ…兵助くん心配になってきたんだけど…」
「ん……まぁ、大丈夫、かな。…うん、大丈夫」
久々知くんはぽん、と俺の頭に手を置いて優しく髪をなでた。
驚いて目を大きくすると、久々知くんは唇に少しだけ笑みを浮かべる。
でも、落ち着いた瞳が少しだけ不安そうに揺れていた。
まあこっちの俺はいろいろ前科があるみたいだから、
気移りしないか心配なんだろうなぁ。
「…あ。髪の色は全然違うけど手触りいいし、やっぱ似てるな」
「ほんと?こっちの俺は赤髪なんでしょ、それもいいなぁー」
「あんたにはこっちの色のが似合ってると思うけど」
「ほんとー?へへ、ありがと」
頭の撫で方、委員会で頑張ったときに褒めてくれる兵助くんのと同じだ。
やっぱり久々知兵助っていう人なんだなぁと実感する。
そう思って自然と笑みがこぼれた。
「…なんかあんたは可愛げあっていいな」
「え」
「可愛い」
「…久々知くんはなんてゆーか…かっこいいね」
「そんなことないけど。 あっちの俺は違うか?」
「んー兵助くんもかっこいいけど…ちょっと可愛いかな。
それに俺に向かって可愛いなんていわないし」
「ふうん」
目を見て喋るところ、声、体は同じなのに、
こうも落ち着いててつかみ所のないのはやっぱり兵助くんとは違う。
けど、
「久々知くんも俺、好きだなあ。
こっちのタカ丸はもっと久々知くんのこと大好きなんだろうけど」
俺の言葉に、久々知くんは少し目を大きくする。
表情の起伏は兵助くんほど分かりやすくないけれど、分かった。
黒い前髪に指を絡めて笑いかける。
「俺と同じで多分、やきもち妬きだと思うから、秘密ね?」
額に掠める程度の口付け。
あなたが幸せでありますようにっておまじないだよと言うと、
久々知くんは驚いたような表情を崩して小さく笑った。
「あっちの俺は幸せそうだな、あんたみたいなのがいて」
「こっちの俺も幸せだと思うよ、久々知くんのおかげで」
そういって目を合わせて、俺たちはお互いに笑いあった。
***
1 金タカ+久々知先輩
この2人は細かいこと気にしない、まぁいいんじゃなーいって感じ。
のんびりゆったり能天気にほわほわしてる。
タカ丸に久々知くんって呼ばせるのが私的に珍しくて楽しいです^^
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