「だからぁ、俺と金髪の俺は別人であなたは俺の知ってる久々知先輩じゃないのー
あ、そーだ、紛らわしいから兵助先輩って呼んでいい?」
「…勝手にしろ」
「じゃあ兵助先輩!
兵助先輩さ、いい加減諦めなよー
時間たてば多分もどるしさぁ、俺と遊ぼうよ、ね?」
「うるさい」
全く別人で髪色は違えど声も顔も知っている斉藤タカ丸と同じ。
このいい加減飽き飽きするほど聞かされても聞き返してしまうこの男の説明に、
ようやくため息をついて納得した素振りを見せる。
納得なんかできるか。
いつもと同じ声で、呼ばれたこともない「先輩」という呼称は気持ち悪くて仕方が無いし、
いつも以上に軽い口調に対する嫌悪感は湧き上がって止まない。
「ねーねーこっちの俺どんな感じなの?」
「お前よりは可愛気ある」
「ふーん、じゃあさあ、俺にはときめかないわけ?」
誰が、と吐き捨てると、拳一個分の距離をおいて隣の赤髪の男は、
兵助先輩も久々知先輩並に容赦ないねぇと笑う。
その横顔は、先ほどまで見せていたようなものではなく、
もっとまっすぐで、よく知っている斉藤タカ丸のものとよく似ていた。
「まあ安心してよ、取って食ったりしないから。
俺が好きなのはあの人だけだからさ」
「…ふうん」
なんだ。
やっぱり、斉藤タカ丸なんだ。
同じ横顔に愛しそうに誰かを想う瞳。
遊び人みたいな雰囲気のなかに、あまりにも一途な部分を見つけ、
思わず食い入るようにその男を見つめていると、不意に目線がかち合った。
「なに、見とれてんの?」
「はあ!?違…っ」
「そっかー兵助先輩は斉藤タカ丸の顔が好みって訳ねー」
けらけら笑うその顔は、やっぱり可愛くない。
「ああもう!お前、さっさと帰れ!」
「帰りたいけど帰れないんだもん。
あ、でも兵助先輩はいいよね、どっちでもいいでしょ?
仕方ないなぁ、顔だけでいいなら貸してあげるよー」
「そんなわけないだろ!
俺が好きなのはタカ丸だっ…け…」
途中まで大声で言って、目の前のしたり顔で我に帰る。
こいつ…おもしろがってやがる…っ
「ふふっ、やだなぁー惚気ないでよ」
「お前ほんといい性格してんな…!」
「あは、褒め言葉として受け取っ輩ておくー」
「~っうるさい!!いい加減黙っ、」
れこのやろう。
という言葉が続くはずだったのに。
「おまっ…!」
「うるさいのは兵助先輩だから」
にんと笑う唇、俺の髪をくるりと弄ぶ指。
見慣れているのにあきらかに違う別の男に、
どうして、どうして唇を奪われねばならんのだ。
「そういうの、最悪だぞ…っお前…!」
「いや、これは浮気の範疇に入らないかなぁと思って。
まあさ、とにかくもうすぐ帰るからさ、そう嫌わないでよ」
ちょっとは傷つくんだよ、その顔で、声で言われるとさ。
そう呟いた表情は長い赤髪で見えなかったけど、やっぱり納得いかない。
「お前なんか大っ嫌いだ!」
***
赤タカ+兵助くん。
こいつらカップリングにすらならねぇ!
お互い相手が恋しくて堪らないんですね、わかります!
にしても最近兵助くんの扱いがあんまりですな(人事か)
赤タカは浮気はしないと誓いましたが、あまりにも煩いので実力行使。
同じ顔で同じ声で最悪と黙れとか言われるとちょっと傷つく。
あと、同じ顔で同じ声でも、先輩より苛めがいあっていいなーとか思ってる。
赤タカは攻めですよ。とても攻め。
***
3・4は元にもどった後の本来のカプのお話です。
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