「恋愛って難しいねー」
重々しいため息を交えて、伊助が呟いた。
使い古した忍たまの友に額を付けて悩んだような表情を浮かべる伊助に、
隣でともに課題をこなしていた庄左ヱ門はすこし目を見開く。
「…おや、うまくいってると思っていたんだけど、僕ら」
「何て恥ずかしいことを冷静に言うの、庄ちゃん」
「何を今更。で、なに」
「…三朗次先輩のこと」
庄左ヱ門はその答えに、あぁ、と納得したように頷いた。
あの先輩については伊助からよく話に聞いている。
「この前、町で会ったんだって」
「タカ丸さんに?」
「うん…そのあと、まだあの人は久々知先輩とちゃんと夫婦やってるって、
馬鹿みたいに変わらずいちゃついてるって笑ってさあ…
あの人も、馬鹿だよ」
そう言って、うつぶせたまま、伊助は唇を尖らせて眉を寄せた。
「タカ丸さんが卒業してから気付いたなんて、遅い。
諦めるつもりだろうけど、傍から見ていてなんか、切ないよ」
「でも伊助はタカ丸と久々知先輩が今でも変わらない仲だと聞いて、
正直どう思ったの」
庄左ヱ門にそう問われて、伊助は眉根を寄せた。
「僕は、」と反射的に開いた口が途中で言葉を失う。
伊助はまっすぐに見つめてくる庄左ヱ門の視線に目を伏せた。
「…僕は、久々知先輩が卒業した後から、
あの人がタカ丸さんに惚れてるって分かってた。
分かってたけど言えばあの人がどうするか分からないから言えなかった。
二人にはそのままで居てほしかったし、
まだ仲が続いてるって聞いたときは、嬉しくてたまんなかった。
でもさ、やっぱりさ、タカ丸さんも久々知先輩も三朗次先輩も好きで、
だから応援したいって、そう思うのは…ずるい、かな……」
そう言って俯いた伊助の口元は、きゅっと唇を噛んでいた。
きっととても悲しそうな顔をしている。
「…僕は、伊助がずるいとは思わないよ。
応援したいってそう思う伊助は、とても優しいと思う」
項垂れた頭を撫でられる。
優しく温かなてのひらが心地よかった。
伊助はようやく顔を上げ、庄左ヱ門を見つめた。
庄左ヱ門はにこりと笑う。
「でも僕は伊助みたいに優しくなくて、
あんまり他の男のことばかり考えられるのは好きじゃないんだ」
「わ、わ、わ、庄ちゃ、」
ぎゅっと抱きすくめられ、
夜着だから簡単に肌蹴た肩に顔をうずめられる。
「…庄ちゃん、冷静になろうよ」
「……伊助のことになるとどうも、ね」
伊助は庄左ヱ門の背中に腕をまわして夜着をぎゅっとつかんだ。
拗ねたような声が可愛くて、くすくすと笑っていると、
さらに抱きしめてくる庄左ヱ門の腕の力が強くなって、
伊助も笑って強く抱きしめ返した。
「…僕は幸せだなぁ」
僕の大好きな人たちもみんな幸せになって、
笑ってくれたらうれしいな。
伊助がそう呟いた声が聞こえたのか、
庄左ヱ門が僕も幸せだよと優しく言った。
***
プラトニックな感じに見えてやることやってたらいい(自重)
この二人の会話とかはタカくくタカのところより熟年度が高そうで、
とても、とても、萌えます!(基本夫婦な雰囲気に弱い)
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